死後離婚の実際 ①姻族関係終了届
- 正明 たかひら
- 2017年5月10日
- 読了時間: 3分
圧倒的に遺された妻が死後離婚を望む場合が多いので、妻を主にして「あなた」と表記します。
夫が遺されている場合も手続きは同じですので、読みかえてください。
夫が死んでも、遺された妻が意思表示しなければ、夫の親兄弟などとの姻族関係はずっと続きます。
義理の親の介護や扶養義務は、法的にはありませんが、倫理的な規定として同居親族や3親等以内の親族(義理の叔父や叔母・甥や姪まで)について、家庭裁判所は扶養義務を負わせることができると民法(877条・730条)で定められているので、現実にはそのような縛りによる嫁舅姑問題などに苦しんでいる方も少なくありません。
そのような状況を解決し、夫の両親・兄弟や親族との姻族関係を解消し、赤の他人に戻るのが死後離婚です。
その方法は簡単で、
夫の死後、姻族関係終了届
を提出するだけで、3親等以内の親族までとの姻族関係を終了させることができます(生前なら離婚届にあたります)。
1. 姻族関係終了届
手続する人:あなた(遺された配偶者)
提出先:あなたの本籍地か住所地の市町村
必要なもの:認め印、死亡した配偶者の戸籍謄本(死亡記載のあるもの)、あなたの本籍地への提出でない場合は戸籍謄本も必要です。
亡き夫やあなたの本籍が不明な場合、夫の住民票の除票やあなたの住民票で確認できます。
メリット:
・義父母などには内緒で提出でき、通知も行きません。
・家庭裁判所の許可なども不必要です。
・遺産ももらえますし、遺族年金も受給できます(遺族年金の継続手続きを社会保険庁でします)。
・夫や義父母と同じ墓に入らなくて済みます(逆に言えば、入りたいと言っても夫の親族が嫌がっては入れなくなる可能性が高くなるとも言えます)。
デメリット:
・子と亡くなった夫の親族の縁は法的に切ることはできません(子が姓を変えてあなたの戸籍に入った後でも、義父母の遺産は受取人の夫が死亡しているので、代襲相続として子が相続人となる)ので、死後離婚についてあなたから子には伝えて、同意を得ておいた方がいいでしょう。
・夫の遺言で、あなたが墓や仏壇などの祭祀承継者とされている場合、祭祀の主宰や供養の・義務が法的にあるわけではありませんし、祭祀財産の処分も可能だとは言え、姻族関係終了届1枚を提出したから後は知らないというのは、無責任だと言われかねません。
まして子は義父母の遺産を相続する権利が残りますから(義父母の生存中に相続放棄はできず、死亡後3か月以内に放棄することになります)、夫の親族がその負担を子に迫ることも考えられますので、注意してください。
・義父母の扶養義務については、例外として、亡夫の生前より義父母と同居しており、他に義父母の扶養義務者がいないなど特別な事情がある場合、家庭裁判所の決定などで、その後もあなたが義父母の扶養義務を負う事もありえます。
・姻族関係終了届提出後は、義父母などの養子になるしか親族関係を回復する手段はありません。
法律でなく現実問題として
・亡夫の墓参りや法事等の連絡もなくなると考えられます。
・義父母と同居の場合、引っ越しの必要があるでしょう。
その他:
子が亡夫の養子の場合、死後離縁として、亡夫との養子関係解消が可能です。
その際、家庭裁判所の許可が必要です。

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