相続財産、ナンボやねん?
- 正明 たかひら
- 2017年7月3日
- 読了時間: 4分
相続財産のもめる例で、亡くなった人の財産を一人の相続人が他の相続人に対して教えてくれない例の話です。
不動産については、大体どこの土地を持っているとか、駐車場として貸しているとかを相続人はご存知でしょうから、その住所・地番を元に法務局で登記簿を取れば、どなたの名義かが分かります。
ですが、タンス預金などの現金は、わかりませんね。
銀行預金はどうでしょうか?
先ず、どこの銀行に口座を待っているかですが、亡くなった方宛の金融機関からの郵便物等が手掛かりになります(これについては、同居していた時のことを思い出していただく必要があるかもしれません)。
それもわからず、まったく手掛かりがない場合には、亡くなった方の生活圏内の金融機関に必要な書類(亡くなった方の除籍謄本と、あなたが相続人であるとわかる戸籍謄本、あなたの印鑑証明と実印)を持って、口座の有無を確認しましょう。 その支店に口座がなかったとしても、同じ金融機関のどこかの支店に口座があれば、教えてくれます。
通常はこれで教えてくれるはずなんですが、どこの銀行の支店に亡くなった方の口座があるとわかっていても、その金額を銀行が教えるのを嫌がる場合もあります。
誰か一人だけで引き下ろしなどができないように、相続人全員の印鑑証明を要求してくる場合もあるでしょう。
そんな場合には、取引履歴を取る手があります。
「相続人の1人 は,金融機関に対して,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使できる」との判例を伝えてください(最高裁判所第1小法廷 平成21年1月22日判決)。
さすがにこの伝家の宝刀をチラ見せして、「判例が間違っているかどうか、本店法務部にでも確認してください」とまで言えば、必ず取引履歴を出してくれます(通常は、そこまで言う前に手続きしてくれます)。
取引推移証明書発行手数料としては、千円ぐらいを見ておけばよいでしょう。
他の手段としては、相続税がかかるような財産の場合、亡くなった後、10か月以内に、相続税の申告をあなたのわかっている範囲で税務署にするのです。 すると財産を隠している人と、あなたの申告額は違ってくるでしょうから、税務署は調査をして、「申告漏れがあるので、修正申告してくだい」と、隠している人以外の相続人にお知らせすることになります。 これは約1年ぐらいかかると見込んでおく方が良いでしょう。 また、銀行口座の解約・引き下ろしや、不動産の名義変更(これは亡くなった人 の名前のまま放置される可能性がありますが)に必要な遺産分割協議者作成の際には、相続人全員の印鑑証明が必要です。
相続財産隠しをしている人が、あなたや他の相続人に対して印鑑証明を求めてきた場合には、最後のチャンスだとして「すべての相続財産を明らかにして、皆が納得いく形で財産分割をして」と、条件を出してください。
更にこじれて、想像財産の総額が分かった後、相続税を払わない場合。
財産隠しをするということは、相続税も払いたくない場合もあると想像できます。
そんな場合、財産隠しをしていた兄弟が支払っていない相続税についても、自分の分を支払い終わった兄弟にツケが回ってくる場合があります。
それが連帯納付義務。
ご自身が受け取った相続額の全額まで、支払っていない兄弟の分の相続税を徴収されます。
恐ろしや…
もっと恐ろしい話2
遺産分割協議書を作り直したとしても、一度税務署に提出しているのですから、やり直しを認めてはくれません。
結論的に最悪のケース3
遺産分割協議書に印鑑は付いたが、分割を兄弟だからと持っていて、そのうちに相続財産を分割しなければならない兄弟が使い切ってしまった場合でも、受け取っていない財産に対して割り当て分までもらってもいない財産に対して、使い切った兄弟の支払っていない相続税分まで支払わされる・・・・・
遺産分割協議書に印鑑を突く前に、必ず相続財産を受け取り、財産隠しをしていた兄弟にかかる相続税を支払う分を天引きしておくなど、財産隠しをされている場合には、念には念を入れておいた方が良いかもしれません。
全財産額が不明で、恐ろしい場合として、もう一つあるのは、後から誰かが生命保険金を受け取っていたとバレる場合です。
この時には、総財産額が増えますので、その生命保険金を受け取っていない相続する人たちの財産割合を総額に掛けて算定される相続税額も、必ず上がってしまいます。
その生命保険金を受け取った人がその分も払ってくれれば良いのですが、生命保険を独り占めしようなんて人が他の相続人の分を「迷惑かけてすみません」などと殊勝に支払うなんてはずがないでしょう。
その辺りも考えて、子どもが全員独立したり、自分の誕生日や結婚記念日、孫の入学などの節目にエンディングノートなどで、銀行の口座や株式口座(金額・銘柄までは書かなくても良い)、生命保険証書などを相続するであろう人たち全員が集まった席などで、明らかにしておくべきです。
争続予防のために。
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